2026.08.28
, 国内
和洋がモザイク状に隣り合う街、函館
- 街歩き
- 北海道
外国人居留地がなし崩し的に広がった雑居の街
函館は1854年の日米和親条約で開港し、後に定められた「開港五港」のひとつ。横浜や神戸、長崎などと同じく外国風の景色が広がる美しい街だ。これらは一見似たような港街に見えるがそれぞれに異なる特徴を持つ。
函館の街並みが他と大きく異なる理由のひとつが外国人居留地が曖昧だったこと。横浜や神戸は川や関所などによって外国人が暮らすエリアが明確に隔てられていたが、函館は当初幕府が定めた海沿いの居留地が狭く、冬の寒さや高波といった住環境の悪さにたまりかねた外国人がなし崩し的に移住。現在の元町である函館山の中腹など見晴らしの良い場所に領事館や自宅を建てた。これにより日本の街並みに洋館が隣り合う風景が誕生した。
急激な人口増加で激甚化した大火による景観の変化
さらに函館は火事が多かった。寒さが厳しいこの地では囲炉裏やストーブが欠かせない。また、三方が海に囲まれた砂州の地形に激しい強風が吹き、一度出火すればその勢いを煽ったり飛び火を起こしたりする。開港によって人口が爆発的に増えて木造家屋が密集していたことも被害の大きさに拍車をかけた。
杉皮や板などを素材に、それが強風で飛ばされないようにと石を載せた簡素な屋根の民家は燃えやすく、石は人の上に熱くて重い砲弾のような形で落ちてきて消火を阻んだ。これらの要因が重なって函館では明治から昭和初期にかけて街の構造や景観をガラリと変えるような大規模火災が少なくとも11回起きている。
小さなエリアにさまざまな宗教の教会が密集
元町エリアには教会が多い。横浜や神戸、長崎にも教会は多いが、函館では地理的な近さもありロシア正教会の存在感が大きい。度重なる火事を防ごうとレンガを漆喰で固めた白亜の壁と緑青を施した銅の屋根、とりわけロシアらしさを感じさせるドーム型屋根のクーポルが印象的だ。
また、外国人居留地がなし崩し的に広がったこともあって、さまざまな宗派の教会同士が極めて近距離に建っているのも特徴。ロシア正教のハリストス、カトリックの元町教会、日本聖公会の函館聖ヨハネ教会、プロテスタントの日本基督教団函館教会、さらには東本願寺函館別院までもが直径250m以内にある。意匠も多彩で眺めているだけで楽しい。

函館ハリストス正教会
- 電話番号
- 0138-23-7387
- 住所
- 函館市元町3-13
- 開館時間
- 10:00~17:00(土曜は~16:00) 日曜13:00~16:00
- 休館日
- 12月26日~3月中旬は不定休、教会行事があるとき
- 料金
- 館内は200円(拝観献金として)
- アクセス
- 市電・十字街から徒歩15分
- 駐車場
- なし
『おとな旅プレミアム 函館・津軽 弘前・青森・白神山地』P.44
インフラ整備から雇用創出まで街の礎を築いた重要人物
函館史に欠かせないピースがもうひとつ。高田屋嘉兵衛という人物だ。船乗りになり国後や択捉への航路を開き、商人として成功を収め、さらには航海中に拿捕され抑留されたロシアで人脈を築いて日露の外交問題を解決する。大河ドラマの主人公のような人生だ。
巨万の富を成した彼はそれを函館に注ぎ込んだ。海を埋め立て山に植林し、防火帯を造り、被災者や生活困窮者に物資を配るなど函館の繁栄は嘉兵衛に拠るところが大きい。
函館山山頂から見下ろすと彼が造った防火帯である護国神社坂や、埋め立てた地に赤レンガ倉庫などが建つウォーターフロントなどが見渡せて嘉兵衛の尽力の大きさがわかる。


函館山山頂展望台
- 電話番号
- 0138-23-3105(総合案内)
- 住所
- 函館市函館山
- 営業時間
- 10:00~22:00(10月1日~4月19日は~21:00)
- 休業日
- 無休
- 料金
- 無料
- アクセス
- 山麓駅から頂上展望台まで約3分のロープウェイのほか、函館山登山バスなどの方法がある。マイカー、レンタカーの場合、4月下旬~11月上旬の夜景タイムと、冬季は登山道の通行が禁止になるので注意が必要。
- 駐車場
- あり
『おとな旅プレミアム 函館・津軽 弘前・青森・白神山地』P.41
元町エリアの散策途中に訪れたい洋館内のティールーム
函館市旧イギリス領事館の中にあるティールーム。建物は瓦の寄棟屋根と白いレンガ造りで、和洋折衷の佇まいが函館らしい洋館だ。
さらに建物の周囲も散策路として素晴らしい。元町公園のすぐ下にあり、前を通る基坂は江戸時代中ごろから行政機関の集まる街の中心地として栄えた通り。坂の上に役所が設けられていたことからお役所坂や御殿坂とも呼ばれてきた。八幡坂や二十間坂、大三坂などフォトジェニックな坂の多い元町エリアでも特筆すべき坂道のひとつだ。
ティールームにはイギリスから取り寄せた調度品が置かれ、自家製のスコーンや薔薇ソフトクリームが味わえる。優雅に3段トレイで供されるアフタヌーンティーを楽しむのも素敵。

ヴィクトリアンローズ ティールーム
- 電話番号
- 0138-83-1800(函館市旧イギリス領事館)
- 住所
- 函館市元町33-14
- 営業時間
- 10:00~18:00(LO17:00、11~3月~16:30、LO16:00)
- 休業日
- 無休
- アクセス
- 市電・末広町から徒歩5分
- 駐車場
- なし
『おとな旅プレミアム 函館・津軽 弘前・青森・白神山地』P.39


