2024.02.22
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冬の白川郷を訪れる
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冬の暮らしに照準を合わせた家づくり
日本の家屋は、ほぼ、夏を快適に過ごすことを基準に建てられているといっていい。吉田兼好の徒然草にも「家の作りやうは、夏をむねとすべし」とある。冬は、いかなる所にも住まる。暑き頃、悪き住居は堪え難きなり、とのことだが、これは京の都で大勢の人手を従えて暮らす法師さまのご意見。続く文章には庭の池も深いものより浅い流れの方が涼しげだとか、とくに用のない所をこだわって作りこむのがおしゃれだというように貴族の屋敷を念頭に置いた住居論が書かれている。だが、豪雪地帯の家づくりは冬の環境を無視しては不都合が多い。1995年ユネスコの文化遺産に登録されて以来、国内外の旅行者の人気を博す白川郷も、豪雪地帯ならではの仕様。
日々の暮らしでの使いやすさを考え抜いた究極の用の美
傾斜の急な屋根には雪が積もりにくく、家の正面が南北に向くよう並べて屋根に陽光があたる時間を長くするなど、雪と雨の多い土地ならではの工夫が随所に施されている。現代になり、あるいは海外の人々がフォトジェニックだと感じる風景は、すべて暮らしを営むに当たっての合理性の結晶。家屋が大きいのは大家族で暮らすため、天井を組む際に釘を用いず縄で縛ることがこの土地特有の重たい雪に耐える柔軟性をもたらし、高い天井裏は数層に区切って養蚕に用いるといった生活の知恵によるもので、合掌造りの家、ひいては郷そのものが究極の用の美、とも言える。兼好法師と、その周囲の貴族たちが理想とする都のお屋敷とはまるで対照的な美しさだ。
古民家のあいだを歩き、高台から郷を一望する
1930年代、当時ヨーロッパに巻き起こっていたジャポニズムに惹かれて日本を訪れたドイツの建築家、ブルーノ・タウトが著書のなかで合掌造りに触れ、「合掌造りは建築学的に見てきわめて合理的かつロジカルである」と語り、白川郷については「日本的な風景ではなく、スイスのようでもある。(実際のスイスでもなく)スイスの幻想であるかもしれぬ。」と感想を述べている。現代の私たちと同様、どこか現実離れした童話の世界のようなイメージを持ったのかもしれない。現在も郷には100を越す合掌造りの家々が並び、人々が暮らしに活用している。家家の並ぶ通りを散策するのも楽しいが、城山天守閣展望台から一望する景色も素晴らしい。
荻町合掌造り集落
- 電話番号
- 05769-6-1013(白川郷観光協会)
- 住所
- 白川村荻町
- アクセス
- 白川郷バスターミナルからすぐ
- 駐車場
- せせらぎ公園駐車場利用(有料)
『おとな旅プレミアム 飛騨高山・白川郷 飛騨古川・下呂温泉』P.110
合掌造りの家屋を内側から拝見する
集落は今も人々が暮らす生活の場だが、神田家や長瀬家など、内部から構造が拝見できる住宅がある。なかでも和田家は、江戸時代には名主や番所役人を、明治期には白川村の初代村長を勤めた古い名家で、江戸中期に建てられた格式高い合掌造りの家屋が見学可能。
役人などの賓客を迎えた書院造りの奥座敷、オクノデイや冠婚葬祭にも用いられたというデイ、囲炉裏の上部の梁や屋根や大黒柱を支える小屋組の造りなどがつぶさに見学できる。生活や養蚕に用いた道具類や、ビデオでの解説なども興味深い。
和田家
- 電話番号
- 05769-6-1058
- 住所
- 白川村荻町997
- 営業時間
- 9:00~17:00
- 休館日
- 不定休
- 料金
- 400円
- アクセス
- 白川郷バスターミナルから徒歩3分
- 駐車場
- なし
『おとな旅プレミアム 飛騨高山・白川郷 飛騨古川・下呂温泉』P.112
山の暮らしには、山の美味が欠かせない
世界遺産に登録された美しい郷に建つ、築150年という合掌造りの古民家で土地の美味が味わえる。メニューのメインは地元の食材をふんだんに使用した郷土料理。飛騨牛の朴葉みそ焼きやニジマスの甘露煮、漬物ステーキなど、白川郷周辺で伝統的に食されてきた食事が味わえる。
ほかにそばやうどん、カレー、丼物などもあり、飛騨牛カレー、山菜丼、白川郷産のそばの実雑炊なども人気を集めている。店内には店の名の通り、囲炉裏の席も用意されている。
お食事処 いろり
- 電話番号
- 05769-6-1737
- 住所
- 白川村荻町374-1
- 営業時間
- 10:00~14:00(LO)
- 休業日
- 不定休
- アクセス
- 白川郷バスターミナルから徒歩2分
- 駐車場
- あり
『おとな旅プレミアム 飛騨高山・白川郷 飛騨古川・下呂温泉』P.116