2023.03.10
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薩摩藩、島津家の別邸、仙巌園を歩く
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中国文化の影響が見られる大名庭園
仙巌は中国江西省貴渓県にある、世界遺産にも登録された奇岩の景勝地だが、薩摩藩島津家の別邸である仙巌園も、大きな石灯籠、巨石を切り出した石橋、滝石組みなど、様々な石が印象的だ。
加えて、孟宗竹の江南竹林や、八角形のモチーフ、高さ11mの巨岩に文字を彫った千尋厳、建造当時に琉球から贈られた東家の望嶽楼など、中国文化の影響も見られる。
さらにこのお庭、他の大名庭園とはスケール感が違う。江戸時代の大名庭園は池泉回遊式がほとんどで、中心に海を模した大きな池を置き、その周囲に築山や植栽を配する。仙巌園にも築山、池はあるが、どうも小さい。1万5千坪もの広さを誇り、8畳分の大きさの笠石を戴いた石灯籠を置く庭らしくないサイズだが、そうではなかった。なんと、桜島を築山に、錦江湾を池に見立てて設計したのだという。庭に海をイメージした池を造るのではなく、逆に海を池に見立てて景色の一部にするという壮大なアイデアだ。
外国に目を向け続けた島津家の歴代当主
仙巌園が造られたのは1658年。薩摩藩2代目藩主、島津光久によって別邸として築かれた。江戸時代の薩摩藩は関ヶ原の戦いで西軍についたため外様大名となったものの、加賀藩100万石に次ぐ石高を誇る雄藩であり、琉球を窓口に中国や朝鮮のほか、アジア諸国との交易も行っていた。8代藩主である重豪は近習たちと流暢な中国語で話したり、オランダ語を解したりするほど海外文化について造詣が深く、11代藩主である斉彬は欧米の技術を使って近代的なコンビナートを築いたが、薩摩は他藩に比べて外国との距離が近く、海外の文物が身近に溢れていた。
仙巌園は光久以降も代々の島津家当主によって手を加えられ、その度に異国情緒が増している。例えば江南竹林は4代目藩主、吉貴が当時の日本にはなかった種類の竹を中国から2株ほど取り寄せて増やしたもの。千尋厳も、文字を彫った巨岩は日本の大名庭園ではここにしかなく、10代目藩主、斉興によって造られたものだ。
世界文化遺産にも登録された島津家別邸
江戸時代の武家文化と島津家ならではの特徴を併せ持つユニークな大名庭園には見どころがいっぱい。10~15時の毎正時に園の入口を出発するガイドツアー(所要約30分、入園料に加えて1人300円)があるので、まずはこの園内ツアーで概要を掴むのもおすすめだ。園から見る桜島と錦江湾、ダイナミックに設計された庭、随所に残る歴史的足跡、神社や風水的に縁起の良いスポットと、見どころを的確かつ簡潔に案内してくれる。
また、仙巌園は植栽も素晴らしく、これからの季節には桜や石楠花、牡丹、躑躅、山藤などが見ごろを迎える。江戸時代の殿様が滞在し、開国後は「南の迎賓館」と呼ばれて外国の要人をもてなした御殿や、幕末の西洋式工場跡、尚古集成館も敷地内にある。ぜひ併せて訪れたい。
仙巌園(ぜんがんえん)
- 電話番号
- 099-247-1551
- 住所
- 鹿児島県鹿児島市吉野町9700-1
- 営業時間
- 9:00~17:00
- 休業日
- 3月第1日曜
- 料金
- 1,000円(尚古集成館と共通)、御殿共通券1500円
- アクセス
- 仙巌園前/仙巌園(磯庭園)前バス停からすぐ
- 駐車場
- 100台(300円)
(『おとな旅プレミアム 鹿児島・宮崎 熊本・屋久島・高千穂』 P.42)
桜島を眺めながら土地の味に舌鼓
仙巌園は広く、見どころもたくさんあるので長めに滞在時間を取りたい。となると必要なのが食事のできる場所だが、園内にある桜華亭は鹿児島らしいメニューと味の良さでおすすめ。薩摩名産、黒豚のしゃぶしゃぶやカツ、奄美地方の郷土料理で薩摩地鶏を使った鶏飯、鯛が好物だったという斉彬公にちなんだ鯛しゃぶなどの御膳が味わえる。
ドリンクメニューも豊富で薩摩の芋焼酎や黒糖焼酎など地酒を用意しており、ここでしか味わえない仙巌園限定の焼酎もある。大きな窓から見える桜島の眺望も美しい。
御膳所 桜華亭(ごぜんどころ おうかてい)
- 電話番号
- 099-247-1551(仙巌園)
- 住所
- 鹿児島県鹿児島市吉野町9700-1
- 営業時間
- 11:00~16:00(LO15:30)
- 休業日
- 3月第1日曜
- アクセス
- 仙巌園前/仙巌園(磯庭園)前バス停からすぐ
- 駐車場
- 100台(300円)
(『おとな旅プレミアム 鹿児島・宮崎 熊本・屋久島・高千穂』 P.47)
大名庭園で抹茶を一服。ランチも用意
仙巌園内にある和カフェ。着物姿の店員さんが点てる霧島産の抹茶や知覧の煎茶に合わせた、かるかん、スイートポテト、島津家の家紋が刻まれたオリジナルの飛龍頭、園内に咲く季節の花をモチーフにした和菓子など、仙巌園らしい菓子が揃う。
数量限定だが、茶そばや鶏飯、ちらし寿司といった食事メニューもあり、気候が暖かくなってくると鹿児島発祥のかき氷、さりょくま(茶寮の白くま)や、桜島の小みかんジュースなども人気を博す。
仙巌園茶寮(せんがんえんさりょう)
- 電話番号
- 099-247-1551(仙巌園)
- 住所
- 鹿児島県鹿児島市吉野町9700-1
- 営業時間
- 9:00~17:00(LO16:30)
- 休業日
- 3月第1日曜
- アクセス
- 仙巌園前/仙巌園(磯庭園)前バス停からすぐ
- 駐車場
- 100台(300円)