2026.04.03
, 海外
「羊のいる丘」を意味するコッツウォルズ
- 街歩き
- ヨーロッパ
ロンドンから日帰りも可能な英国らしさ満点の地域
コッツウォルズは英国の人々にとって理想の故郷といったイメージ。日本のパスポート(発行年による)には葛飾北斎の浮世絵が描かれているものがあるが、イギリスの旅券に印刷されているのはバイブリーのアーリントン・ロウだ。
シェイクスピアが生まれ育った街はストラトフォード・アポン・エイヴォンで、この地方が偉大な劇作家の作品の基本的な背景となっているであろうことも想像に難くない。映画『ハリー・ポッター』や世界的なヒット・ドラマ『ダウントン・アビー』、ジェイン・オースティンの名作小説をドラマ化したBBC制作の『高慢と偏見』など、英国を代表する多くの映像作品もコッツウォルズで撮影されている。私たちがイメージするイギリスがぎゅっと詰まったエリアなのだ。
現代プロダクト・デザインの父、モリスが愛した村々
ほかにもコッツウォルズから発信された英国を象徴する文物は多い。産業革命によって安価に供給できる大量生産品が世に溢れた19世紀末、手作りの工芸品に焦点を当て美しさと実用性を兼ね備えた工芸品をもって暮らすことを理想に据えたアーツ・アンド・クラフツ(美術工芸)運動が起こる。
これを牽引したのがモダン・プロダクト・デザインの父と呼ばれるウィリアム・モリスで、彼はこの地を英国でいちばん美しい村と評した。自身、コッツウォルズ東部のケルムスコット村に別荘を構えてコッツウォルズの英国の古き良き風景と職人技術から多大なインスピレーションを得ながらテキスタイルや家具など、家などをデザインした。
いまも愛され続けるリバティ・プリントの聖地
美術工芸運動の中から生まれた商品で、今も根強い人気を誇るもののひとつがリバティ・プリントだ。リバティは1875年にロンドンで創業した老舗百貨店で、創業者アーサー・リバティはモリスと同時代を生き美術工芸運動に共鳴した人物。
リバティ百貨店が展開するテキスタイルはおもにタナローンと呼ばれるコットンに花や蝶、小鳥といった自然をモチーフにした精緻な柄をプリントしたもので、このデザインは服やカーテン、バッグやクマのぬいぐるみなどさまざまな商品となって現在も世界で広く愛されている。モリスが自身で興したモリス商会が倒産した後はモリスがデザインした生地もリバティ百貨店がライセンスを得て取り扱っている。

リバティ Liberty
- 電話番号
- 020-3893-3062
- 住所
- Regent St, W1B 5AH
- 営業時間
- 10:00~20:00 日曜12:00~18:00
- 休業日
- 無休
- アクセス
- U Oxford Circusオックスフォード・サーカス駅から徒歩3分
『おとな旅プレミアム ロンドン コッツウォルズ』P.134
コルン川沿いに建つ石造りのホテルやコテージ
ウィリアム・モリスがイングランドで最も美しい村と評したのがバイブリー。象徴となっているのがコルン川のすぐ側に位置するアーリントン・ロウと呼ばれるコテージで、英国のパスポートに描かれているのもこの建築物だ。
1380年頃に羊毛の貯蔵庫として建てられたものだが17世紀になると織物職人の住居として使用されるようになる。建材となっているライムストーンは蜂蜜色と形容され風景としても美しいが、それ以上に羊毛、手仕事、自然との調和というモリスが愛したコッツウォルズを体現する存在でもある。白鳥などの水鳥が浮かぶ水辺の眺望とともに楽しみたい。

バイブリー Bibury
- アクセス
- ロンドンのVictoria Coach Stationヴィクトリア・コーチ・ステーションから長距離バスで約2時間のCirencesterサイレンセスター下車。ローカルバスで約15分、Bibury Post Officeバイブリー・ポスト・オフィス下車。
『おとな旅プレミアム ロンドン コッツウォルズ』P.170
『ハリー・ポッター』ファン必訪の村
ウィリアム・モリスが安価だが粗雑な大量生産品に嫌気がさしてアーツ・アンド・クラフツ運動を率いた同じ頃、美しい自然や歴史的建造物が破壊されて行くのを嘆いた3人の英国人がいた。彼らは地域住民から寄付や会費を募って土地や建物を買取り、保全する目的でナショナル・トラストという団体を設立した。
レイコックは、村全体がこの団体によって管理、保存されており、路地などを歩いているとまるで中世~18世紀の頃にタイムスリップしたような感覚が味わえる。そのため数々の映画やドラマのロケ地となっており、特に『ハリー・ポッター』シリーズのファンにとっては必ず訪れるべき巡礼地となっている。

レイコック Lacock
- アクセス
- ロンドンのPaddingtonパディントン駅から鉄道で約1時間10分のChippenhamチッペナム下車。ローカルバスで約25分、The Georgeザ・ジョージ下車。
『おとな旅プレミアム ロンドン コッツウォルズ』P.176


