vol.98

信長、秀吉、千利休に一目置かれた戦国武将蒲生氏郷が築いた松阪の街

伊勢市駅から快速で20分の松阪は
武士の暮らしに商家の繁栄
国内トップのブランド牛と
見るもの食べるものが盛り沢山


近江、大阪と並び称される豪腕、松阪商人

おとな旅 伊勢・志摩・鳥羽

伊勢屋稲荷に犬のくそ。落語のマクラにも登場するフレーズで、共通項は、江戸の町にありふれているもの。ご町内に複数の社があることも稀でないほどの信仰を集めた稲荷神社や、生類憐みの令の影響で激増した犬たちの落とし物と比べられるほど数多の店を連ねていたのが、伊勢屋という屋号を持つ店だった。
2022年の現在、江戸期いちばんの繁華街であった日本橋に立って辺りを眺めてみても、三越、国分、にんべん等、往時からいまに至るまでご商売を続ける老舗の旧伊勢屋、松阪商人創業の店がずらり。江戸の当時はどれほどたくさんの伊勢屋さんが居並んでいたのかと想像するだに壮観だ。


現代日本のビジネス界をも支える旧松阪のあきんど

おとな旅 伊勢・志摩・鳥羽

江戸で隆盛を誇った伊勢屋の多くが、松阪の出身。彼らは松阪商人と呼ばれ、近江、大阪と並び称されたほどの凄腕揃いだった。なぜ、松阪の商人たちが成功をおさめたかについてはいくつも理由があるが、領主、蒲生氏郷の存在が大きい。かの信長に「目つきが尋常ではない。只者ではあるまいから娘婿に迎えよう」と引き立てられ、次女、冬姫と結婚したのが氏郷。キリシタン大名でもあり、戦国の世には珍しく側室を設けず一筋に妻を愛し、折々には自ら風呂を沸かして部下をもてなすなど愛情深い武将として、さらには千利休に一目置かれた文化人としても名高い。
出生地は、近江商人の里、滋賀県の近江日野。信長の死後、秀吉傘下の大名となり、武功の褒美として南伊勢を与えられた折り、秀吉のいる大阪から一字を取って地名を松阪と定め、軍事的に街の守りを固めること、もの作りや商いが栄えることを念頭に都市計画を進めた。政策もしかり。故郷、近江から優秀な商人たちを誘致し、領外との交通を活発にするため街道を整備。さらには楽市楽座を発令し、既得権益を享受してきた者ばかりでなく、多くの人々が自由闊達にビジネスが行えるよう手配した。先述の三越、国分、にんべんのほか、三井、イオン、東洋紡、岡三証券など、松阪商人が起こした企業の多くがいまに続き、日本経済を支えている。松阪の基礎を築いた蒲生氏郷の功績は、現代日本人にとっても大きい。


お江戸を席巻。個性とデザイン性に富んだ松阪木綿

■松阪もめん手織りセンター

おとな旅 伊勢・志摩・鳥羽

松阪商人が商ったもののうち、江戸の街で特に人気を集めたのが伊勢木綿、勢州木綿とも呼ばれた松阪木綿。倹約令がかしましく、パッと見に華美な着物を着るのが憚られた時代、派手ではないが、藍で先染めした糸を織ることで多彩な縞柄やグラデーションを表現する木綿生地は松阪嶋と呼ばれ、粋を信条とする江戸っ子たちの人気を集めた。江戸好みのデザイン性に加え、品質の高さや、三越の前身でもある越後屋呉服店を始めとする松阪商人たちの販売網もあって大流行。京の西陣織、奄美の大島紬と同様、「松阪を着る」という表現ができるほどだった。松阪もめん手織りセンターでは、松阪木綿を仕立てた洋服や、財布、バッグなどを販売している。また、3日前までに予約すれば、織姫体験と名付けられた機織体験が可能。思わず没頭してしまう人も多い、人気のプログラムだ。


おとな旅 伊勢・志摩・鳥羽

 電話番号 :0598-26-6355
 住所 :松阪市本町2176 松阪市産業振興センター1F
 営業時間 :9:00~17:00
 休業日 :火曜(祝日の場合は翌日)
 料金 :入場無料、織姫体験1300円~
 アクセス :JR/近鉄・松阪駅から徒歩12分
 駐車場 :あり(30台)
(『おとな旅プレミアム 伊勢・志摩 鳥羽 ’21-’22年版』 P. 134)


いまも江戸時代の姿そのまま。武家屋敷街

■御城番屋敷

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蒲生氏郷が築いた松坂城の跡地に隣接。江戸時代末期、お城の警護のため紀州から遣わされた40石取りの藩士たちが家族とともに暮らした組屋敷だ。いまも子孫の方々が暮らしており、お屋敷と一帯を維持、管理している。西棟北端の1軒は松阪市が借り受け、内部を創建当時の姿に修復して一般公開している。2004年「旧松坂御城番長屋」として国の重要文化財に指定。石畳沿いにきちんと刈り込まれた槙の生垣が並ぶ様は整然として美しく、武士の時代そのまま。


おとな旅 伊勢・志摩・鳥羽

 電話番号 :0598-26-5174
 住所 :松阪市殿町1385
 開業時間 :10:00~16:00
 休業日 :月曜(祝日の場合は翌日)
 料金 :無料
 アクセス :JR/近鉄・松阪駅から徒歩14分
 駐車場 :あり(松阪市駐車場)
(『おとな旅プレミアム 伊勢・志摩 鳥羽 ’21-’22年版』 P.130)


和牛の草分けにして最高峰、松阪牛を堪能する

■和田金

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松阪を訪れるなら、絶対に外せないのが和牛の最高峰ブランド、松阪牛。当地では、「まつさかうし」「まつさかぎゅう」と濁らずに呼ぶ。このエリアでの牛飼いの歴史は江戸時代に遡る。農耕用に但馬から買い入れ、ゆったりと肥えた牛が人に懐くほど大切に育てたらしい。明治に入り、ビーフを食す習慣のある外国人がやってくると東京へと販路を広げ、肥育や健康の状態にまで気を配ったビジネス姿勢でブランドを確立する。日本国内のみならず、和牛の美味しさを知る世界の人々が一度はここで食べてみたいと憧れる和田金は、明治11年(1878)の創業。東京の料亭、和田平などで研鑽を積んだ松田金兵衛が、故郷の松阪に店を開き、やがてすき焼きの名店として美食家垂涎の店となった。寿き焼、あみ焼き、ステーキと、一級の松阪牛がさまざまに味わえる。


おとな旅 伊勢・志摩・鳥羽

 電話番号 :0598-21-1188(代表)
 住所 :松阪市中町1878
 営業時間 :11:30(土・日曜、祝日11:00)~最終入店19:00
 休業日 :第4火曜(月により変動)
 アクセス :JR/近鉄・松阪駅から徒歩8分
 駐車場 :あり(50台)
(『おとな旅プレミアム 伊勢・志摩 鳥羽 ’21-’22年版』 P.132)


*施設や店舗の営業などは事前にご確認ください。


画像素材: PIXTA 他


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