vol.93

数多の映画やドラマに登場昭和レトロな坂の街、尾道

高台から眺める海や
迷路のような路地
どこを切り取っても
フォトジェニック


名画、名監督を育む尾道の風景

おとな旅 宮島・広島 尾道・倉敷

入り組んだ急峻な坂道に所狭しと住宅が並ぶ尾道。下方にキラキラと光る海があり、路地には猫がのんびりと暮らす。レトロな商店街や由緒ある古刹も多く、風光明媚でありながら情緒と生活感に溢れた景色が創作者の琴線に触れるのか、数々の映画のロケ地となった。
もっとも有名なのが尾道で生まれた大林宣彦監督の尾道3部作、『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』と、新・尾道3部作の『ふたり』『あした』『あの、夏の日』。なかでも『転校生』で主人公2人が転げ落ちて入れ替わる御袖天満宮の石段での場面は作品を観ていない人にまで知られる名シーンだ。日本映画の巨匠、小津安二郎監督の代表作、『東京物語』では終盤、笠智衆と原節子が佇む浄土寺のシーンが印象的。ほかにも、新藤兼人監督の『悲しみは女だけに』、佐藤純彌監督の『男たちの大和』、山田洋二監督の『おとこはつらいよ 口笛を吹く寅次郎』など尾道で撮影された作品は挙げればキリがない。
新藤兼人監督は若い頃、大林監督の実家が持つ家で暮らしていたこともあるようで、魅力ある風景は人々の心に残る作品だけでなく、それを創る名クリエイターをも育むのかもしれない。


いまも面影を残す文字で描写された尾道の景色

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この地が育んだのは映画監督だけではない。当地ゆかりの作家も数多く、千光寺から千光寺公園へと続く文学のこみちには彼らの作品を刻んだ文学碑が25基、点在している。例えば林芙美子の『放浪記』の1節。「海が見えた。海が見える。五年振りに見る尾道の海はなつかしい。汽車が尾道の海へさしかかると、煤けた小さい町の屋根が提灯のように、拡がってくる。」という一節は、映画『東京物語』のラストシーンで原節子演じる紀子が乗る汽車の様子と重なる。また、志賀直哉の『暗夜行路』で描写された「六時になると上の千光寺で刻の鐘をつく。ごーんとなると直ぐゴーンと反響が一つ、又一つ、それが遠くから帰ってくる。」という風景は、志賀直哉がこの地に暮らした頃も、いまも変わらない。千光寺については、これを詠んだ歌人も多く、中村憲吉、頼山陽などの作品が碑に刻まれている。さらに遊歩道には、正岡子規、徳富蘇峰、河東碧梧桐、松尾芭蕉など日本の文学史に名を残す文人の作品が刻まれた碑が連なっている。


映画のロケ地、文学作品の舞台となった古刹

■千光寺

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大同元年(806)、弘法大師によって開かれた大宝山権現院千光寺。数々の歌や小説に描かれており、『放浪記』にも「赤い千光寺の塔が見える」と登場するが、朱塗りの本堂は尾道のシンボルとなっている。広い境内には、玉の岩、大師堂、客殿、護摩堂、鐘楼、梵字岩、くさり山など見どころが多く、境内にある鼓岩(ポンポン岩)では、大林監督の映画『あの、夏の日』の撮影が行われた。残したい日本の音風景100選にも選ばれる鐘の音は、『暗夜行路』のほか、中村憲吉、俚謡、柳原白蓮の作品にも描かれている。尾道水道を望む境内からの景色も素晴らしい。


 電話番号 :0848-23-2310
 住所 :広島県尾道市東土堂町15-1
 開業時間 :9:00~17:00
 休業日 :無休
 料金 :無料
 駐車場 :あり
(『おとな旅プレミアム 宮島・広島 尾道・倉敷 ’21-’22年版』 P. 97)


アララギ派の歌人がここで療養

■中村憲吉旧居

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伊藤左千夫、斎藤茂吉など、正岡子規の元に集まった歌人たちが中心となって編集、発刊した『アララギ』派の歌人、中村憲吉が病気療養のため、最晩年を過ごした家。斎藤茂吉、土屋文明ら数多の歌人が見舞いに訪れた。千光寺山中腹に位置しており、尾道水道などを見渡す眺望が病と闘う憲吉を大いに慰めたという。尾道で詠んだ「千光寺に夜もすがらなる時の鐘 耳にまぢかく寝ねがてにける」「病むわれに妻が屠蘇酒をもて来れば たまゆら嬉し新年にして」「病む室の窓の枯れ木の桜さへ 枝つやづきて春はせまりぬ」などの作品が残る。


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 電話番号 :0848-20-7514(尾道市役所文化振興係)
 住所 :広島県尾道市東土堂町15-10
 開業時間 :10:00~16:00(外観のみ見学可)
 休業日 :月~金曜(祝日の場合は開館)
 料金 :無料
 駐車場 :なし
(『おとな旅プレミアム 宮島・広島 尾道・倉敷 ’21-’22年版』 P.98)


築100年の木造建築は見応えあり

■料亭旅館 魚信

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大林宣彦監督の作品、『ふたり』『あした』のロケが行われた料亭旅館。築約100年が経つ木造3階の建物は、灯籠、欄間、天井と細部に至るまで素晴らしく、部屋からは尾道大橋、尾道水道などが一望できる。タイやメバル、カレイ、トラフグなど地魚を使った料理が好評を博し、特にオコゼは、薄造り、唐揚げ、煮凝り、赤出汁とさまざまに味わえる。


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 電話番号 :0848-37-4175
 住所 :広島県尾道市久保2-27-6
 開業時間 :11:30~14:00 17:30~21:00(LO19:30)
 休業 :不定休
 アクセス :千光寺山ロープウェイ・山麓駅から徒歩7分
 駐車場 :なし
(『おとな旅プレミアム 宮島・広島 尾道・倉敷 ’21-’22年版』 P.103)


*施設や店舗の営業などは事前にご確認ください。


画像素材: PIXTA 他


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