vol.90

初代総理も思わず解禁本場、下関で味わう美味なる毒魚

今年もいよいよ冬到来
透きとおる上品な白身に
極上の旨みを湛えて
人々を魅了するふぐの旬


ふぐは先人の試行錯誤が生んだ美味

おとな旅 萩・津和野 下関・門司

ふぐは美味い。が、毒を持つ。死に至るほどの凶毒だ。外国人に言わせると、不気味なビジュアルから悪魔の魚介と呼ばれるタコと並び、それを食す日本人は狂気の沙汰だそうだが、私たち日本人は縄文の昔からふぐを食べてきた。メソッドが確立され、管理の行き届いた現代とは違い、無論、かつては犠牲者も多かった。当たれば死ぬというのでふぐを鉄砲と呼ぶ地域もあるほどだ。 江戸時代には怖さ半分、食い気半分でたくさんの川柳も詠まれた。「臆病は葱ばかり食ふ雪の夜」「フグ売りを仇と思う愚痴な後家」などが有名だが、特に侍はふぐを口にして命を落とした場合、死ぬだけでは済まない。家が潰されて家名も断絶となる。武家に仕え、厨を預かっていたこともあるとされる松尾芭蕉などは「河豚汁や鯛もあるのに無分別」との句を残しているが、ふぐとタイの味はまるで別物。共に美味しい白身魚だが、それぞれに異なる旨みと食感があり、どちらも諦め難い。


ふぐ食禁止と解禁に動いた歴史上の偉人

おとな旅 萩・津和野 下関・門司

ふぐ食を禁じたのは豊臣秀吉。朝鮮出兵のため全国から下関に集結した兵士たちがこぞってふぐを喰らって中毒死したことからふぐ食禁止令を出したと伝わる。武士たるもの、主君の一大事にこそ捧げるべき命を食べ物の誘惑なぞに負けて落とすとは言語道断、ということで江戸時代を通じて厳しい沙汰は続く。
禁を解いたのは初代首相、伊藤博文だ。明治20年(1887)の年の瀬、首相が下関の春風楼を訪れたが海が荒れて魚が獲れない。このままでは要人をもてなすことができないと困った女将が厳罰覚悟でふぐを供し、その味に感嘆した伊藤博文が山口県令に働きかけて解禁と相成った、というのが公の説だが伊藤博文は長州出身。下関をはじめ、山口に暮らす庶民の間では解禁以前から、どう捌き、どの部位を食せば安全に美味しく味わうことができるかというノウハウが確立していた。長州を拠点にした、あるいはこの地を訪れた幕末の志士がふぐの味を覚え、全国に広めたとの説があるほどで、伊藤博文公は維新以前から好んでいたふぐをこの機に公許のものとしたとも考えられる。ともあれ、現在では47都道府県、すべての地域で味わえるふぐだが、当初許されたのは下関と福岡のみ。ふぐを傷つけずに獲る延縄漁の技が確立したのは山口県の粭島で、皿の絵柄が透けるほど薄く捌いて盛り付けるふぐ刺しの技術も山口が発祥とされている。漁、養殖、調理技術。どれをとっても下関はふぐの本場。旬である冬に訪れるなら外せない極上の美味だ。


フグ目魚類の展示種類は世界一

■下関市立しものせき水族館「海響館」

おとな旅 萩・津和野 下関・門司

ペンギン、アシカ、イルカと水族館で馴染みのある動物たちが暮らし、楽しいショーのほか、イルカタッチやペンギンへのエサやりなど、動物たちと直に触れ合える体験イベントが人気を集めている。また、下関の水族館ならではの展示として特筆すべきは観察できるふぐの種類の多さ。ヒトヅラハリセンボンにシッポウフグ、ラクダハコフグなどフグ目の魚類に関して世界一の展示種類を誇る。マンボウやカワハギもふぐの1種だったかと新たな発見をしたり、水鉄砲を発射してエサをねだるハリセンボンのユーモラスな仕草に癒やされたりと飽きることがない。


 電話番号 :083-228-1100
 住所 :山口県下関市あるかぽーと6-1
 営業時間 :9:30~17:30(入館は~17:00)
 休業日 :無休
 入館料 :2090円
 アクセス :JR下関駅からサンデン交通バスで海響館前下車すぐ
 駐車場 :周辺駐車場利用
(『おとな旅プレミアム 萩・津和野 下関・門司 ’21-’22年版』 P. 103)


ふぐ食解禁のきっかけとなった老舗料理店

■春帆楼 本店

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明治20年(1887)当時の女将、藤野ミチが初代内閣総理大臣、伊藤博文にふぐを供して解禁のきっかけとなった。現在では日本全国遍く出せるふぐ料理だが、この店がふぐ料理公許第1号店。伊藤博文以外にも高杉晋作や山縣有朋をはじめ、数多くの志士たちがこの店の常連だったという。日清講和会議など歴史の舞台ともなった老舗で、春帆楼という屋号は春のうららかな海に多くの帆船が浮かぶ沖合いの海を観た伊藤博文によって命名された。現在もふぐといえばこの店、と第一に名のあがる名店で、厳選された上質なとらふぐが味わえる。


おとな旅 萩・津和野 下関・門司

 電話番号 :083-223-7181
 住所 :山口県下関市阿弥陀寺町4-2
 開業時間 :11:00~14:00 17:00~22:00
 休業日 :無休
 アクセス :JR下関駅からサンデン交通バスで赤間神宮前下車すぐ
 駐車場 :あり
(『おとな旅プレミアム 萩・津和野 下関・門司 ’21-’22年版』 P.106)


味よし、酒よし、雰囲気よしの隠れ家料理店

■魚菜 浜ふく

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店構えは一見、ごく普通の住宅。新山口駅から徒歩5分という便利な場所にありながら隠れ家のような雰囲気を湛えている。料理は瀬戸内海、日本海で採れる旬の海鮮を中心に、地元の野菜、低温で調理する肉料理などどれも美味しく、価格もリーズナブル。山口の地酒の品揃えも素晴らしく、もちろん、山口を代表する美味、ふぐも味わえる。


おとな旅 萩・津和野 下関・門司

 電話番号 :0839-73-2929
 住所 :山口県山口市小郡大江町1-23
 営業時間 :17:30~23:00(LO22:30)
 休業日 :日曜(月曜が祝日の場合は営業、月曜休)
 アクセス :JR新山口駅から徒歩5分
 駐車場 :あり
(『おとな旅プレミアム 萩・津和野 下関・門司 ’21-’22年版』 P.139)


*施設や店舗の営業などは事前にご確認ください。


画像素材: PIXTA 他


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