vol.85

江戸、明治の時代からセレブな旅客に鍛えられた洗練のリゾート、箱根で過ごす初秋の休日

宮様や外国人を魅了し
彼らに育まれた山のリゾート
ハイグレードな宿とグルメを
気軽にじっくり堪能する


いまも昔も人々を惹きつける美しい景色と温泉

おとな旅 箱根

幕府の重要な関所が置かれていたせいか、江戸時代の箱根は宿場町というイメージが強いが、実は軽井沢、日光と並ぶ古くからの保養地。江戸時代初期には大名や裕福な商人など逗留型の湯治客を中心に、さらに時代が進むと伊勢参りやおかげ参り、富士講の一行が旅路の途中立ち寄る一夜湯治で賑わった。
近代になり、国が開かれるとまずは外国人、次いで宮様や政府要人など多くのセレブリティが避暑を目的に訪れるようになる。風光明媚な土地は標高の高さもあって都内中心部より涼しく、将軍にも献上された質の高い温泉が湯量豊かに湧く。小田原という肥沃な漁場を抱えた港が近く、山の幸も潤沢、水も良いので食事がおいしい。加えて首都である東京、居留地の置かれた横浜からもほど近いとなれば、上質な宿や別荘が次々に集積するのは自然の理。戦時中は各国の大使館や領事館、商社などがおかれたこともあって密やかではあるが華やかな外国文化が息づき続け、長い時間をかけて現在の箱根にも受け継がれるハイソかつ洗練された雰囲気が醸成された。


箱根の近代化を担い、外国人をもてなした富士屋ホテル

おとな旅 箱根

江戸時代にも長崎の出島に滞在した外国人が江戸参府の道すがら立ち寄ることがあり、ケンペル、ツェンベリー、シーボルトなど、おもに医師たちが箱根の動植物や旅路についての記録を残しているが、横浜が開港すると箱根を訪れる外国人客は激増する。明治11年(1878)、富士屋ホテルがオープンし、ホテル主導で電気や電話、車が通れる道路といったインフラが整い、西洋料理を供するための厨房やゴルフコースが備わると、国内外のセレブが集う社交場となった。創業から約150年が経つ老舗ホテルの宿帳には、各国のロイヤル・ファミリーや首脳などの国賓のほか、チャップリンやヘレンケラー、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ等、錚々たるセレブの名が記されている。
いまも明治、大正、昭和初期のままの建物が現役で使われ、セレブたちの滞在した客室に泊まることが可能。ホテルの楽しみ方としては宿泊し、クラシカルな屋内プールや数々の逸話が残る庭などを堪能するのがいちばんだが、泊まらずとも館内の「メイン・ダイニングルーム・フジヤ」でオーセンティックなフランス料理や、「カスケードルーム」のカレー、アップルパイといった長く伝わるシグニチャー・ディッシュを味わうだけでも十分に往時の華やかさが感じられる。周辺にはいまも、海外からの賓客を撮影し続けてきた古い写真館やアンティークショップなどがあり、「チャップリンの散歩道」や「チェンバレンの散歩道」と富士屋ホテルに投宿したセレブ由来の散策路も残る。富士屋ホテルと併せて、ホテルが牽引し近代化させた宮ノ下の街そのものも賞玩したい。


日本のオーベルジュの先駆けにして最高峰

■オーベルジュ オー・ミラドー

おとな旅 箱根

オーベルジュとは宿泊施設を付帯したレストランを指し、地の食材を用い、風土に根ざした料理を供するのが特徴。このオー・ミラドーは1986年にオープンした日本初のオーベルジュで、オーナーシェフは約半世紀にわたり日本のフランス料理界を牽引し続ける勝又登氏。1970年代初めには西麻布で「ビストロ ・ド・ラ・シテ」を開いてビストロ・ブームを起こし、1970年代後半には六本木に「レストラン オー・シザーブル」をオープンして日本にヌーベル・キュイジーヌを広めた伝説のシェフだ。現在もシェフ自ら畑や港、牧場を歩き、厨房に立って陣頭指揮をとる。三島で採れる野菜や相模湾、駿河湾の魚介、丹沢のジビエなど箱根周辺の豊かな食材を生かしたフレンチはオーセンティックでありながら軽々とした新しさに溢れ、国内外のセレブにもファンが多い。温泉を備えた宿泊棟も好評で、ダイニングのある本館、フランスのシャトーを思わせるパヴィヨン、アジアン・リゾートのようなコロニアルとバラエティに富んだ3棟があり、芦ノ湖を望む客室も素敵。
レストラン利用の場合は”箱根”ガラメニュー1万4300円、シェフズテーブル2万4200円の2コースから選べる。


おとな旅 箱根

 電話番号 :0460-84-7229
 住所 :箱根町元箱根159-15
 アクセス :箱根ロープウェイ・桃源台駅から車で3分
 駐車場 :30台
 IN :15:00
 OUT :11:00
 室 :22室
 予算 :1泊2食付ツイン2万6620円~、ジュニアスイート3万3880円~、芦ノ湖エクストラルーム3万6300円~など
(『おとな旅プレミアム 箱根 ’21-’22年版』 P.126)


建設当時のままの姿を残す洋館でいただく旬の和食

■懐石料理 花壇

おとな旅 箱根

箱根を代表する名旅館のひとつ、強羅花壇の食を宿泊せずとも味わうことのできる懐石料理店。月ごとに献立が変わる料理は、旬の食材と季節感、美しい彩りに溢れていて箸をとる前から心が躍り、食せばどれも食材の滋味が豊かに感じられる。瀟洒な佇まいの建物は、昭和5年(1930)、閑院宮家別邸として建てられた洋館で、ハーフティンバー様式の外観やステンドグラス、窓の桟に至るまで当時のままの姿を残す。旅館と隣接しているので、食事と貸切露天風呂での入浴やエステを組み合わせた日帰りプランも用意されている。


おとな旅 箱根

 電話番号 :0460-82-3333
 住所 :箱根町強羅1300強羅花壇
 開業時間 :11:00~15:30(LO14:00) 17:30~21:00(LO19:00)
 休業日 :不定休
 アクセス :箱根登山鉄道・強羅駅から徒歩3分
 駐車場 :あり
(『おとな旅プレミアム 箱根 ’21-’22年版』 P.108)


創業100年を越す人気の老舗豆腐店

■箱根 銀豆腐

おとな旅 箱根

水のおいしい箱根には質の高い豆腐屋さんが多いが、なかでも屈指の老舗がこの銀豆腐。毎日、夜が開けきらない早朝から作る豆腐は周辺の名旅館や料理屋さんにも卸しており、強羅の名物ランチ、田むら銀かつ亭の豆腐かつ煮にも用いられる逸品。特にすすめたいのは午前中に売り切れることも多いしゃくり豆腐。水に晒していないのでほのかに温かく、なめらかな舌触りと、大豆の香り、甘味が際立つ。持ち帰りには適さないため店頭で出来立てを味わう人の姿が目立つ。まずはその場でしゃくり豆腐を味わい、みやげに木綿豆腐や厚揚げなどを買い求めるのが常連旅行者の定番スタイル。


おとな旅 箱根

 電話番号 :0460-82-2652
 住所 :箱根町強羅1300-261
 開業時間 :7:00~17:00(売り切れ次第閉店)
 休業日 :木曜
 アクセス :箱根登山鉄道・強羅駅から徒歩2分
 駐車場 :あり
(『おとな旅プレミアム 箱根 ’21-’22年版』 P.111)


*施設や店舗の営業などは事前にご確認ください。


画像素材: PIXTA 他


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