vol.71

令和のいまも京の都に現存する平安文学の舞台を観に行く

日本文学が大きく花開いた平安時代
貴族たちはあらゆるものを歌で表現し
世界初ともいわれる女流作家が活躍した
彼らが描いた風景を前に作品を鑑賞する


平安の貴族社会にとって歌は最も重要な教養

おとな旅 京都

今から約1200年の昔。ひとかどの人は皆、歌を詠んだ。それが天皇や皇族、貴族、僧侶、そして彼らに仕える家臣や女房たちに至るまで、最低限備えておくべき教養であり、歌の上手下手によって恋の成就から出世まで、人生そのものを左右する重要な素養であったからだ。歌に自信のない者は代筆を依頼したり、歌の得意な女房は高い位の裕福な貴族に雇われたりもしたという。自然、和歌だけでなく文学全体について知識やセンスが磨かれ、世界最古の女流小説家とされる紫式部が『源氏物語』を書き、そのライバルといわれる清少納言が名随筆『枕草子』を残した。もちろん、男性作家も活躍している。『枕草子』と並び日本三大随筆に数えられる『方丈記』を記した鴨長明、国宝にも指定されている日記『明月記』の著者であり、歌論書の執筆や数々の和歌集を編纂した藤原定家など、挙げていけばキリがなく、もちろん、皆、歌の名手であった。


1200年前の作家と同じ景色に立つ贅沢

おとな旅 京都

京都は幸いにも応仁の乱以降、大きな戦乱がなく、第二次世界大戦の爆撃も免れている。そのため、平安時代の人々が目にしたままの建物や庭が数多く現存している。平安の文人が暮らしを営み、物見遊山に出かけ、筆を走らせた風景のなかで彼らの歌を味わい、小説や随筆の舞台となった場所を訪ねることができるのだ。例えば御所は『源氏物語』のメインステージであり、いまも毎年脈々と続けられている葵祭は『源氏物語』のほか、『枕草子』『大鏡』などにも描かれている。これは、現代人たる私たちにとって、大げさでなく奇跡と呼べる幸運であり、京都は、王朝文学ファンならずとも平安時代の気分に気軽に触れることのできる稀有な街だといえる。1200年前に書かれた文学と目前の景色を重ね合わせる贅沢。思う存分楽しみたい。


王朝文学ファンなら、まずは御所を訪ねたい

■京都御所

おとな旅 京都

現在の御所は安政2(1855)年に建てられたもので、平安時代よりも2kmほど東に移っているが、平安期の内裏の姿を今に残す。実際に南北朝時代から明治初期まで天皇陛下がお住まいになられており、紫宸殿、清涼殿など、『源氏物語』や『枕草子』に登場する施設が見学可能。「ここで光る君が生まれ、藤壺の宮に恋をしたのか」、「清少納言が宮仕えした場所か」と思うと感慨深い。


おとな旅 京都

 電話番号 :075-211-1215(宮内庁京都事務所参観係)
 住所 :京都市上京区京都御苑
 開館時間 :4~8月9:00~17:00(入場は~16:20)3・9月9:00~16:30(入場は~15:50)
10~2月9:00~16:00(入場は~15:20)
 休業日 :月曜(祝日の場合は翌日)、ほか臨時休あり
 料金 :無料
 アクセス :地下鉄烏丸線・今出川駅から徒歩5分
 駐車場 :京都御苑駐車場利用(有料)
(『おとな旅プレミアム京都 第3版』 P26・85・90)


恋愛成就、疫病退散などのパワースポットとしても有名

■貴船神社

おとな旅 京都

創建は不詳だがとても古く、1300年ほど前に御社殿が造り替えられたと伝わる。水神さまをお祀りしており、パワースポットの多い京都のなかでも特に厚い信仰を集める神社で、日照りや水害、疫病の流行など、国の一大事には朝廷から勅使が送られ、平穏を祈願した。また、和泉式部が夫の浮気を気に病んで貴船神社にお参りし、「もの思へば沢の蛍もわが身よりあくがれいづる魂かとぞ見る(夫の心変わりを悩んでいると、貴船川の蛍が私の身体から抜け出ていく魂のように思えます)」と歌を奉納したところ、「奥山にたぎりて落つる滝つ瀬の魂ちるばかりものな思ひそ(奥山の滝のしぶきのように魂が抜けるほど悩むでないぞ)」との神の声が聞こえ、復縁が叶ったという逸話から恋愛成就のお社としても名高い。


おとな旅 京都

 電話番号 :075-741-2016
 住所 :京都市左京区鞍馬貴船町180
 開館時間 :授与所9:00~17:00
※ライトアップ期間中など、時季により延長あり
 休業日 :無休
 料金 :無料
 アクセス :京都バス・貴船下車、徒歩5分
 駐車場 :25台(有料)
(『おとな旅プレミアム京都 第3版』 P28・P54・P171)


歌人、西行法師を慕った歌人、俳人の歌碑も見どころ

■西行井戸

おとな旅 京都

北面の武士として鳥羽上皇に仕えたのち、23歳で出家。諸国を旅しながら歌を詠み、生涯で2300首もの歌を残したという西行法師が嵯峨野で庵を結んでいた時代に使っていたとされる井戸。新古今和歌集に94首もの作品が載り、歌集『山家集』を残すなど、後の世の歌人たちに多大な影響を与えたことから、法師を慕う歌人たちの歌碑が周囲に数多く立てられている。井戸の横に立つ西行法師の歌碑には「牝鹿なく小倉の山のすそ近み ただ独りすむわが心かな」という歌が刻まれている。


おとな旅 京都

 住所 :京都市右京区嵯峨小倉山緋明神町
 開館時間 :見学自由
 アクセス :市バス嵯峨釈迦堂前下車、徒歩10分
 駐車場 :なし
(『おとな旅プレミアム京都 第3版』 P31)


*施設や店舗の営業などは事前にご確認ください。


画像素材: PIXTA 他


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