Vol. 38

レトロかつロマンティック往時の華やぎ湛える小樽を歩く

煉瓦造りの洋館に
和洋折衷の木造邸宅
100年の時を封じ込めた
名建築のタイムカプセル

一大港湾都市として隆盛極めた明治~昭和初期

小樽は、札幌や函館と並ぶ道内で最も歴史の古い都市のひとつ。江戸時代初頭には、松前藩によって商場(あきないば)が置かれ、アイヌの人々との交易地となっていた。また、天然の良港であったため、江戸期後半になるとニシン漁の拠点、北前船の寄港地として栄えた。
さらに明治に入ると、小樽は一段と飛躍を遂げる。蒸気機関の燃料として道内で採れる石炭が脚光を浴び、明治13年(1880)には道内最初の鉄道、官営幌内鉄道手宮線が開通。大量の石炭が小樽を通り、重工業の成長著しい国内各地はもちろん、上海や香港などの国外へも輸出されていく。
大正時代には商都としての発展も著しく、札幌の10行、函館の16行を大きく上回る25もの銀行が小樽に林立。数多の商社や大手海運会社も社屋を構え、ニューヨークになぞらえて北のウォール街と称されるほどのビジネス・タウンとなった。北海道、ひいては日本全体の近代化の大きな一翼を担った一大港湾都市であったのだ。


岸辺のガス灯も暖かく、ゆるりと弧を描く運河

往時の街並みはいまも色濃い。大正12年(1923)に完成した運河は小樽の顔であり、運河沿いに建つ倉庫をはじめ、銀行、商工会議所のビル、商家、教会、医院など、明治~昭和初期にかけての建築物も数多く現存している。これらは、煉瓦造り、コンクリート製、木骨石造りなど建築様式はさまざまだが、どれもどこか和洋折衷な風貌。生活様式が大きく変化した時代に建てられた建造物群が小樽特有のレトロな街並みを形成している。
運河にはクルーズ船も航行しており、水上から眺める小樽はさらにロマンティック。街並みや港、歴史的建造物についての解説も詳しく、また、昼と夜、さらには季節によって雰囲気がガラリと異なるのも楽しい。


歴史的建造物でひと休み

小樽では、古い建物をそのまま保存するだけでなく、ショップやホテル、レストラン、カフェなどに利用されており、旅行者が中に入ることのできる施設も多い。
なかでもおすすめなのが、ハンドメイドのガラス製品を製造、販売する北一硝子が運営する北一ホールだ。運河沿いに建つ小樽軟石の倉庫を使ったカフェで、店内の照明に一切電灯を使わず、石油ランプの灯りのみで店内が照らされている。毎朝8:45になると、シャンデリア、壁面、卓上に置かれた167個ものランプひとつひとつに手作業で火が灯されていく。薄暗い店内にひとつずつ火が入り、ランプがずらりと並んだシャンデリアが天井へと吊り上げられて明るさが増していくさまは圧巻。厳かともいえる作業風景に、旅の朝がいっそう印象深いものとなる。


画像素材:PIXTA


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