
栄養と旨みをたっぷりと湛えた魚介を育む網走、オホーツクの流氷
北半球ではここが南限
地理的条件が奇跡的に重なって
流氷が岸辺まで押し寄せる
北海道、オホーツクの海
オホーツクは流氷の南限

北海道のオホーツク沿岸には毎年、流氷がやってくる。今年も2月2日、網走で「流氷初日」を観測したというニュースが報じられた。「流氷初日」とは陸地にある気象台からシーズン初の流氷が見えた日のことで、日本に暮らしていると、このニュースは桜の開花や初霜の便り同様、何の不思議もない季節の挨拶のようなものに感じられる。が、実は世界的にみるとかなりのレアケース。
例えば網走の北緯は44度で、これはカナダ、アメリカの国境付近とほぼ同じ。ヨーロッパで北緯45度あたりといえばイタリアのミラノやヴェネツィア。フランスならボルドーの辺りで、これより南の地域は南仏と呼ばれる。いずれも、到底海は凍らない。
北海道で流氷が見られるのはオホーツク側のみ

ではなぜ、比較的緯度の低い北海道の海に氷ができるのか。最大の理由は水深にある。この海域はアジア大陸北東部と樺太、千島列島、そして北海道に囲まれた大陸棚であり、浅い。そのためシベリアから吹きつける冷たい季節風がダイレクトに海水温に影響する。
しかもオホーツク海はアムール川から大量の真水が流入するので深水50mほどを境にして塩分濃度がガラリとかわる。水は0℃で凍るが、海水は真水より氷点が低く、マイナス1.8℃まで下がってようやく凍り始めるのだが、塩分の低い部分はより高い温度で氷結し始める。
また、四方を陸地に囲まれているという条件は、太平洋、日本海といった周囲の海との交わりにくさともなり、いわば池や湖のように域内の水温や塩分濃度が保たれる。これが緯度の低い北海道で、しかもオホーツク沿岸のみで流氷が見られる理由だ。
ダイナミックな氷の海をクルーズ
■流氷観光砕氷船 おーろら(りゅうひょうかんこうさいひょうせんおーろら)

「おーろら」は、網走港をベースに運航する観光船。南極観測船「しらせ」と同様、船の重みで氷を砕きつつ海を渡っていく。定員400名という大型船でもあり、揺れが少なく快適。厚板硬質ガラスの2重窓や暖房といった設備も万全、トイレや売店、コーヒーラウンジまで備わっており、快適に観光クルーズが楽しめる。外気に直接触れる展望デッキに出れば目の前に広がるのは迫力満点の 海。運が良ければアザラシやオオワシ、オジロワシに出会えることもある。

電話 :0152-43-6000
住所 :網走市南3東4-5-1 道の駅 流氷街道網走
営業時間 :1月20日~4月上旬、1日2~6便、所要60分、要予約
休業日 :4月上旬~1月19日
料金 :沖合航路3500円(流氷がない場合は能取岬遊覧2700円)
アクセス :JR網走駅から車で5分
駐車場 :あり
(『おとな旅プレミアム 知床・阿寒 釧路湿原』 P.120)
オホーツク海や知床連山を駅から一望
■北浜駅展望台(きたはまえきてんぼうだい)

JR釧網本線で網走から約10km。ポツンと建つ小さな駅舎の目の前にはオホーツク海が広がり、手を伸ばせば届きそうな距離に流氷が迫る。ホームには5mほどの高さの展望台が設置され、上ればさらに眺望は迫力満点。晴れた日には知床連山や斜里岳が見える。
昭和の名作、『網走番外地』をはじめとする映画やドラマにも登場する木造の駅舎は昭和を彷彿とさせるレトロな雰囲気が魅力で、壁には観光に訪れた旅行者が貼った名刺や切符がずらり。駅は係員のいない無人駅だが、「停車場」という名の喫茶店が併設されており、地元の食材をたっぷり使ったシーフードのラーメンやホタテカレー、目玉焼きをのせたハンバーグなどが味わえる。古い電車の客車で使用していた椅子や網棚といったインテリアにも懐かしい味わいがある。


電話 :0152-46-2410(停車場)
住所 :網走市北浜 JR北浜駅構内
開業・休業日・料金 :見学自由
アクセス :JR網走駅から車で20分
駐車場 :あり
(『おとな旅プレミアム 知床・阿寒 釧路湿原』 P.121)
オホーツク海が育む季節の魚介

一面真っ白な流氷の海。冬のオホーツク海は、一見、何もかもが凍てついた海の砂漠といった様相だ。が、この氷こそが海域を豊穣の海たらしめる理由そのもの。
水とは不思議な性質を持った物質で、一般的な物質とは異なり、個体である氷の方が液体の状態よりも軽くなる。グラスの中の水に氷が浮かぶように海の氷も浮かんでいるのだ。また、塩水より真水が凍りやすいこともあり、海水が凍る際には、塩分を外に排出しながら固まっていく。より氷状になったマイナス0度ほどの薄い塩水が海面近くに留まり、結氷時に押し出された塩分濃度の高い水はマイナス1.8度近くにまで冷えながら液体の状態を保ちつつ底に沈んでいく。この性質の異なる2つの水がオホーツクの海を上下に対流させ、まるで人が田畑を耕すのと同じ工程を海自身が行って、プランクトンのゆりかごを作る。この豊かなプランクトンは海域に暮らす魚を支える食糧となって、栄養と旨みをたっぷりと湛えた魚介を育む。
■寿し安(すしやす)

網走で70年近くお店を続ける寿し安では、この栄養豊富な地元の海で育った美味しい魚介が刺身や寿司、焼き物、揚げ物、珍味などさまざまな料理で堪能できる。特に人気の看板メニュー、オホーツク寿司は、キンキ、サーモン、ホタテ、ホッキ、ボタンエビ、カニの外子、カニ、ウニ、イクラ、クジラと10貫すべてがオホーツク産。気軽に入れる雰囲気と鮮度抜群の食材で、全国にファンを持つ有名店だ。

電話 :0152-43-4121
住所 :網走市南5西2-8
営業時間 :11:00~14:00(LO13:30)17:00~21:00(LO20:30)
休業日 :日曜
アクセス :JR網走駅から徒歩15分
駐車場:あり
(『おとな旅プレミアム 知床・阿寒 釧路湿原』 P.135)
*施設や店舗の営業などは事前にご確認ください。
画像素材: PIXTA 他
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