vol.114

一楽ニ萩三唐津茶人たちに愛され続ける山口県の萩焼

茶の湯が武将の教養だった時代
朝鮮から招致された陶工と
周囲で採れる良質な土によって
花開いた茶器の名窯業地、萩


萩の七化け。気に入りの焼き物を大切に育む楽しみ

おとな旅 萩・津和野 下関・門司

中国に養壷という考え方がある。土ものの急須を使って長年、質の高いお茶を淹れ続けることで、徐々に茶の成分が陶器の肌に染み込んで茶器自体が艶を増して美しく、また、その器で淹れる茶の味も一段とおいしくなっていくという。上手に育った急須は、新作の逸品、あるいは歴史的、芸術的価値のある骨董以上に高額で取り引きされることさえある。
どんな陶器でも大切に手入れしながら使い続けることで新品以上の風情、風合いを纏っていくものだが、日本の萩焼は、この、使い込むことで器を育てる、ということに特に適した焼き物だ。


魅力は手にしっくりと馴染む土の柔らかさ

おとな旅 萩・津和野 下関・門司

その最大の理由は土の柔らかさにある。山口県周辺では良質な粘土がふんだんに採れる。萩の窯元では、山口県防府市大道から山口市鋳銭司四辻あたりを産地とする大道土(台道土)をメインに、萩沖に浮かぶ月島の月島土、福栄村福井下金峯の金嶺土をブレンドして生地をつくるが、いずれも鉄分などのミネラルが多く、粘性が低い。吸水性が高く耐火性に優れているため、高温の窯で焼くが、そのため焼き締まりが弱く、また、生地と釉薬の収縮率の差から生まれる細かなヒビ、貫入の美しい陶器に焼き上がる。ものによっては使い始める前におもゆなどに漬けて目止めの作業をしないと器に注いだ水が漏れ出してしまうほど、ゆったりと繋がった土の生地は使い続けるほどにお茶やお酒などが染み込んで、次第に貫入の存在感が増し、色味、風合いが変わっていく。萩の七化け、と言われる萩焼の醍醐味だ。絵柄をあまり描き入れず、土そのものの美しさを愛で、釉薬の艶やかさや貫入を味わい、経年変化を楽しむ。侘び寂びの真髄であり、古くから茶人たちのあいだで一楽(京都)ニ萩三唐津と並び称されてきた極上の陶器が、この萩焼だ。萩を訪れた際にはじっくりと選んで気に入りの器を求め、大切に育てて行きたいものだ。


気に入りの萩焼で萩の地酒を飲む贅沢

■彩陶庵(さいとうあん)

おとな旅 萩・津和野 下関・門司

そもそも萩焼は戦国期に始まった焼き物。織田信長や千利休によって、茶の湯が武人、文化人が当然備えるべき嗜みとなり、茶器が土地と同等の恩賞として、あるいは人質などに代わる外交交渉の手段として用いられ、茶碗ひとつが一国、あるいは城ひとつと同等の価値を持つとさえ言われた時代、文禄・慶長の役の際、豊臣秀吉の命により朝鮮から数多くの陶工が招致された。萩焼は、萩藩を開いた毛利輝元によってこの時に招かれた李朝の陶工がルーツ。


この彩陶庵では、人間国宝となった名人やその流れを汲む作家、新進気鋭の若手など、萩を代表する作品を扱っており、さながら萩焼の博物館のよう。もちろん、日常使いのできる手ごろな価格帯の物もあり、購入も可能。しかも萩の地酒も独自のセレクトで扱っており、萩の地酒と萩焼のコラボレーションも提案している。現代の暮らしにあった萩焼が入手できる店だ。


おとな旅 萩・津和野 下関・門司

 電話 :0838-25-3110
 住所 :山口県萩市呉服町1-3
 開店時間 :10:00~17:30
 休業日 :水・木曜
 アクセス :JR萩駅からまぁーるバス・西回りで萩博物館前下車、徒歩3分
 駐車場 :あり
(『おとな旅プレミアム 萩・津和野 下関・門司』 P.60)


古民家の窯元で萩焼づくりを体験

■元萩窯(げんしゅうがま)

おとな旅 萩・津和野 下関・門司

藍場川のほとりに建つこの窯元は、築130年という古民家を改修して利用しており、店内に並ぶ数々の焼き物と相まってなんとも素敵。萩焼といえば欠かせない茶道具はもちろん、マグカップや皿、箸置きなど、毎日愛用したくなる作品が多く、野菜や魚など、ユニークなモチーフのものも目立つ。また、作品の見学や購入だけでなく、事前に予約しておけば、ろくろや手びねりでの作品作りや絵付けの体験ができる。乾燥や焼きなど、仕上げの工程を施した完成作品が2~3カ月後に送られてくるのも大きな楽しみ。


おとな旅 萩・津和野 下関・門司

 電話 :0838-25-0842
 住所 :山口県萩市川島14
 営業時間 :9:00~17:30
 休業日 :不定休
 アクセス :JR萩駅からまぁーるバス・西回りで藍場川入口下車、徒歩8分
 駐車場 :あり
(『おとな旅プレミアム 萩・津和野 下関・門司』 P.63)


萩焼の器で料理が味わえる古民家カフェ

■晦事(ことこと)

おとな旅 萩・津和野 下関・門司

世界遺産にもなっている萩の城下町、呉服町にあるカフェ。建物は築200年という古民家をリフォームした落ち着いた空間で、配された北欧家具や坪庭の景色に、つい時間を忘れてくつろいでしまう。地元で採れる食材をたっぷりと使った料理はどれもおいしく、特に萩特産の夏みかんを使ったマーマレード、萩マルマレットのトーストは絶品。料理を載せる器は、萩でも人気の高い窯元、大屋窯の作品。店内にはショップ・スペースもあり、萩焼のほか、地元の作家さんが作るさまざまな雑貨が並んでいる。


おとな旅 萩・津和野 下関・門司

 電話 :0838-26-7199
 住所 :山口県萩市呉服町2-32
 営業時間 :10:00~17:00(季節により異なる)
 休業日 :第2・4火曜
 アクセス :JR萩駅からまぁーるバス・西回りで萩博物館前下車、徒歩4分
 駐車場:あり
(『おとな旅プレミアム 萩・津和野 下関・門司』 P.58)


*施設や店舗の営業などは事前にご確認ください。


画像素材: PIXTA 他


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