vol.113

幕末のニッポンを揺るがす大事件開国のきっかけとなった下田港

太平の眠りを覚ます蒸気船が来航
幕末から維新、開国へと
激動の時代の幕開けとなった港町
下田を歩いてレトロな街並みを楽しむ


外国の軍艦に驚く徳川幕府と下田の人々

おとな旅 伊豆

下田といえばペリー来航。教科書にも載る日本史上の一大トピックだ。嘉永6年(1853)当時、初めて黒船を目にした日本人は驚いた。船だと認識できない人も多く、信じがたいことだが、中には巨大な黒船を目前にしながら海には何も浮かんでいないと言い張る者もいた。訳がわからなすぎて目に映すことさえ無意識に拒否したのだろう。ともあれ、事実として黒船は提督と水兵、大砲を載せてやってきた。アメリカの捕鯨船が水や薪を補給するための寄港地を求めて武力を背景に開国を迫ってきたのだ。


170年ほど前の出来事だが、現在の下田にもペリー提督の足跡は色濃い。街には日米和親条約に伴って結ばれた下田条約調印の舞台、了仙寺があり、その後、日露和親条約締結と日米和親条約の批准書交換が行われた長楽寺がある。ペリーロードと名付けられた通りは提督が行進曲を吹き鳴らす軍楽隊や兵士を引き連れて通った道で、今も幕末~明治の風情を伝えるガス灯が燈る。


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現在の街並みをつくった外国船来航時の大地震

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下田繁栄の歴史はペリー来航のずっと以前に遡る。伊豆の近海は海底の地形が複雑で暗礁も多く、船を着けるのが難しい。その点、下田の辺りは海が深く、風力のみで船を動かしていた時代、この地で風待ちをする者が多かった。出船入船三千艘と謳われた賑わいは、その江戸期の様子を表現したものだ。ゆえに街には当時から旅館も多く、茅葺き屋根の家々に混じってなまこ壁を用いた立派な家や蔵もあった。濃いグレーの壁面に施された立体的な白い漆喰が描く斜め格子模様は、往時の様子を伝えるとともに、いまも下田の街並みの特徴となっている。


なまこ壁は下田特有のものではなく、日本全国で見られる典型的な蔵のスタイルだが、下田にかくも多く現存するには訳がある。嘉永から安政へと年号が変わった1854年、安政東海地震が起こる。マグニチュード8.4という大地震で、下田は大津波に襲われる。昼間の地震だったこともあり、多くの市民が難を逃れたとは言うが、それでも9割以上の建物が流されたり倒壊したりと甚大な被害が出た。街全体がほぼ更地になったと言っていい。ペリー来航から7ヶ月の出来事で米国の軍艦こそ一旦本国に帰っていたが、下田には米国に続いて入国してきたロシアのプチャーチン率いる戦艦がおり、まさに日露交渉の真っ最中だった。交渉中の外国にいつまでも大きなキズを負った街を晒しておく訳にはいかない。幕府は素早い対応を見せる。地震当日の11月4日には土地の代官が炊き出しを始め、同月10日には米1500石と金2000両の復興資金が下田に届いた。災害に耐えてわずかに残った建物がなまこ壁の家や蔵であったことから、再度の地震、津波に備えて街にはなまこ壁の建物が数多く建てられた。これらが、いま下田で見られる風景を形作っている。


下田が外国船を受け入れていたのはわずか5年と数ヶ月に過ぎないが、街にとっても日本にとっても激動の時代であった。当時の面影を濃厚に残す街並みを歩き、外国との条約を交わした寺を訪ねたり、なまこ壁の古民家カフェでくつろいだりと日本の転換点となった時代に思いを馳せるのも面白い。さらには豊かな海がもたらす魚介も下田散策の大きな楽しみ。野趣溢れる磯料理を味わうのもおすすめだ。


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幕末の風情と異国情緒漂う石畳の道

■ペリーロード

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ペリー提督が彼の水兵たちとともに歩いた400mほどの通り。平滑川沿いに石造りの建物が並び、柳が風にたなびく様子に隆盛を誇った港町、下田の花柳界の面影を宿す。通りには、カフェやアンティーク・ショップが並び、のんびりと散策するのに打ってつけ。日米和親条約の付録である下田条約がここで締結され、国指定の史跡でもある了仙寺や日露和親条約が結ばれた長楽寺、下田港を一望する下田公園も近い。


 電話 :0558-22-1531(下田市観光協会)
 住所 :下田市3
 アクセス :伊豆急下田駅から徒歩15分
 駐車場 :なし
(『おとな旅プレミアム 伊豆』 P.82)


なまこ壁の中に昔懐かしい品々を配したレトロな喫茶店

■珈琲店 邪宗門(こーひーてん じゃしゅうもん)

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なまこ壁に瓦屋根という下田らしい建物を用いたコーヒー店。オープンから半世紀以上が経つ老舗で、店内には丸型のポストやアンティークなレジスター、古い看板、船の舵などが配されてレトロな雰囲気を醸し出している。亡くなられたマスターは多趣味で知られた人物で、店に置かれたカメラなどの骨董は亡きご主人の趣味。店の一角には書や陶芸、写真など、マスターの作品が展示されている。珈琲店の店名どおり、もちろんコーヒーがおいしいが、メニューにはシナモンと蜂蜜をたっぷりとかけたハニートーストやケーキなども並ぶ。


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 電話 :0558-22-3582
 住所 :下田市1-11-19
 営業時間 :11:00~16:00
 休業日 :水・木曜
 アクセス :伊豆急下田駅から徒歩5分
 駐車場 :あり
(『おとな旅プレミアム 伊豆』 P.82)


新鮮な魚介をシンプルながら絶品磯料理で満喫

■磯料理 ゑび満(いそりょうり えびまん)

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創業から50年以上。開店時から継ぎ足しつつ使われる魚の煮付けや伊勢海老の鬼瓦焼きのタレには食材の旨みが加わり続け、これが店の味の要となっている。コクと深みたっぷりながら意外にもあっさりとした味わいで、近海で採れる魚介との相性が抜群。伊勢海老やサザエはもちろん、キンメダイやオナガダイ、ホウボウといった季節ごとに揚がる地魚もいい。刺身、煮付け、焼き魚のほか、唐揚げやフライ等の揚げ物まで多彩な調理で味わえる。地魚のごま漬け丼、あぶり刺身のネギ飯、魚の種類が日替わりの下田丼など、丼物もおすすめ。


 電話 :0558-22-2166
 住所 :下田市3-3-12
 営業時間 :11:30~23:00(LO22:00)
 休業日 :水曜(年末年始、夏季は無休)
 アクセス :伊豆急下田駅から徒歩10分
 駐車場:なし
(『おとな旅プレミアム 伊豆』 P.89)


*施設や店舗の営業などは事前にご確認ください。


画像素材: PIXTA 他


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