vol.111

11月半ばから12月前半が見頃平安貴族も愛でた錦繍の嵐山

古くから数多の歌に詠まれた
大堰川両岸に迫る紅葉の山
雅かつ大迫力の風景が広がる秋は
嵯峨野、嵐山の本領たる季節


和歌を生み育む、嵯峨野、嵐山の景色

おとな旅 京都

藤原定家、西行、松尾芭蕉、与謝蕪村、正岡子規、樋口一葉、高浜虚子と、史上、数えきれないほど多くの名手が歌に詠んだ嵐山。風光明媚なことに加え、平安の時代から貴族が別荘を構えたり、出家後の庵を結んだりと、和歌の生まれる土壌的条件は日本でも指折りの場所だ。小倉百人一首の小倉も、渡月橋の架かる大堰川(保津川、桂川)の北岸に位置する小倉山に百人一首の撰者である藤原定家の山荘があったことに由来する。


嵐山を描いた秀歌を一首ずつ読んでみると、王朝時代から桜と紅葉の名所として名高い土地柄ゆえか春と秋の歌が多い。藤原定家の歌に「ふきさらふ もみぢの上の霧はれて 嶺たしかなるあらし山かな」とあるように、嵐山という地名は、桜や紅葉を散らす嵐の吹く山ゆえにこの名が付いたとの説もある。


和歌の宴から生まれた故事成語

おとな旅 京都

嵐山には和歌の舞台としてのエピソードが数々あるが、平安期の歴史書『大鏡』に、後に故事成語となった話しが記されている。入道、つまり藤原道長が大堰川で舟遊びを開催。3隻の舟を浮かべ、作文(漢詩)、管弦、和歌と分けて、それぞれに秀でた者たちを乗せた。並み居る公達のなかでも、大納言であった藤原公任はそのいずれにも優れており、入道が彼はどの舟を選ぶのかと興味深く見ていたところ、和歌の舟に乗り込み、「小倉山 嵐の風の寒ければ紅葉の錦着る人ぞなき」と詠んだ。さすが自ら志願して和歌の舟を選ばれただけあって見事なものだと褒められた大納言は、作文の舟に乗ればよかった、この和歌程度の漢詩を作ればもっと名が上がっただろうにと悔しがる。何か1つを上手にするのも難しいのに、かつてない優秀な方ですね、と評判を得たというストーリーで、以降、漢詩、和歌、管弦と王朝貴族にとって欠かせない教養すべてに優れる様、人を三舟の才と呼んだ。
これからの季節、嵯峨野、嵐山は錦繍に染まる。平安のトップエリート、藤原公任が詠んだ紅葉の錦を纏いに秋の嵐山を訪れるのも素晴らしい。


嵐山、亀山を借景にした雄大な庭は必見

■天龍寺(てんりゅうじ)

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天龍寺は、嵐山に足を運ぶなら訪れるべき第一のスポット。創建は1339年(暦応2年)。足利尊氏が後醍醐天皇の供養のために開いたもので、室町時代には京都五山のなかでも第一の寺格とされた。かつては境内もいまの10倍と広大で、亀山公園、渡月橋、嵐山までが含まれていたという。建物自体は応仁の乱や度重なる火事で消失してしまい、明治から昭和初期にかけて現在の姿に復興したが、庭園は、700年前、初代住職にして歌人、作庭家でもあった夢窓疎石が作った当時の様子が色濃く残る。中心に置いた曹源池の周囲を廻る池泉回遊庭園で、嵐山、亀山と視線の届く範囲すべてを借景にした雄大さ。日本初の史跡、特別名勝となった。


また、庭や建物、風景の素晴らしさと、東映、日活の撮影所との物理的近さから、天龍寺で撮影された映画も数えきれない。現在はロケの申請を受け付けていないというが、大正から昭和にかけて、繁忙期には1日複数本の映画やテレビドラマの撮影が行なわれることもあった。鞍馬天狗や西鶴一代女、忠臣蔵に水戸黄門、太閤記など、だれもが知る時代劇がこの寺で撮影されている。


 電話 :075-881-1235
 住所 :右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
 営業時間 :8:30~17:30(10月21日~3月20日は~17:00、受付は各10分前まで)、北門9:00~17:00(10月21日~3月20日は~16:30)
 休業日 :無休
 参拝料 :庭園500円、諸堂参拝の場合は300円追加
 アクセス :嵐電・嵐山駅からすぐ/JR嵯峨嵐山駅から徒歩13分
 駐車場 :120台(有料)
(『おとな旅プレミアム 京都』 P.73)


摂社、月読神社は嵐山の地名の由来とも言われる

■松尾大社(まつのおたいしゃ)

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嵐山という地名の由来は諸説あり、前述の葉や花を吹き荒らす山だからという説がそのひとつ。別の有力な説に、この松尾大社の摂社、月読神社にまつわるものがある。天照大神と素戔嗚尊の兄弟にあたる神様、月読尊を祀った神社で、縁起が日本書紀に記されている。顕宗天皇3年(487年)、阿閉臣事代(あえのことしろ)が任那に遣わされる途中で、「我が祖である高皇産霊には天地創造の功績がある。だから私を祀りなさい。言う通りにすれば福をもたらそう」とのご神託を賜ったのでそれを天皇に奏上し、歌荒樔田(うたあらすだ)の地を戴いて月読尊をお祀りした。この歌荒樔田が、のちに嵐山と表記されるようになったという。この月読神社は京都でも屈指のパワースポットとしても知られ、特に子宝、安産のご利益が厚いとされている。


また、松尾大社は古社名刹の多い京都の中でも最古の社で、大宝元年(701)の社殿創建から1300年を超す。松風苑三庭は、昭和を代表する作庭家、重森三玲(しげもりみれい)の作で、天龍寺の庭とはまた異なる美しさ。現代庭園の傑作だ。


 電話 :075-871-5016
 住所 :西京区嵐山宮町3
 営業時間 :境内自由、庭園拝観9:00~16:30(日曜、祝日は~17:00、受付は各30分前まで)
 休業日 :無休
 参拝料 :庭園・神像館共通500円
 アクセス :阪急嵐山線・松尾大社駅から徒歩2分
 駐車場 :約100台
(『おとな旅プレミアム 京都』 P.34)


週末は行列ができる、願いが叶うと評判のお寺

■鈴虫寺(華厳寺)(すずむしでら(けごんじ))

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華厳寺が正式な名だが、鈴虫寺という愛称のほうが有名。晩夏、初秋のみならず年間を通じて鈴虫の音を聴くことができる珍しいお寺だ。こちらのお寺では、書院でお茶とお菓子をいただきながら拝聴する説法が楽しい。華厳寺について、あるいは鈴虫のこと、さらには仏教に基づく暮らしの中での考え方などをユーモアをたっぷりと散りばめながら話してくださるので、拝聴する参詣者たちの笑い声が絶えない。また、幸福地蔵菩薩と呼ばれるお地蔵さまは、ひとつだけ願いを叶えてくださると評判。お参りのコツは説法の中で教えてくださるが、評判が評判を呼び、週末などは遠方からの参詣者が門前に行列を成す。



 電話 :075-381-3830
 住所 :西京区松室地家町31
 営業時間 :9:00~17:00(受付は~16:30)
 休業日 :無休
 参拝料 :500円(茶菓子付)
 アクセス :市バス・松尾大社前下車、徒歩15分/京都バス・苔寺・すず虫寺下車、徒歩3分)
 駐車場:60台(有料)
(『おとな旅プレミアム 京都』 P.100)


*施設や店舗の営業などは事前にご確認ください。


画像素材: PIXTA 他


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