Vol. 08

梅雨に華やぐ中世の都紫陽花に染まる仏都・鎌倉を歩く

170を超す寺社が建ち並ぶ古都・鎌倉。
壮大な禅寺がたたずむ静寂の北鎌倉と
大仏が鎮座し、花寺の集う長谷で、
寺社を彩る梅雨の花々に会いに行く。

北条氏が築いた北鎌倉の壮大な寺院群

鎌倉の大仏で知られる神奈川県鎌倉市は、中世鎌倉時代に政治の中心を成した古都で、由緒ある寺院の多い仏都でもある。  

 

鎌倉時代に浄土宗、浄土真宗、臨済宗、曹洞宗、時宗などの鎌倉新仏教が隆興すると、将軍や武士たちは鎌倉各地にこぞって寺院を建立した。今も残る寺院群が古都の風情を醸し出している。なかでも隆盛を極めたのは、幕府の支持を得て発展した禅宗一派の臨済宗だ。執権・北条氏の領地があった北鎌倉には、建長寺、円覚寺などの格式高い臨済宗の大伽藍が数多く建てられた。  

 

梅雨時のこの季節、山々に抱かれた北鎌倉の禅寺はアジサイに代表される梅雨の花々に包まれて華やぎ、一年で最も賑わいをみせる。  

 

明月院ブルーの鮮やかさに酔う

JR北鎌倉駅近くの円覚寺は、8代執権・北条時宗が鎌倉中期に創建した。鎌倉五山第二位の寺格を誇り、谷戸と呼ばれる谷間地形に沿うように伽藍が並ぶ。梅雨に入れば、山門や境内の各所で青や赤のアジサイが花開く。塔頭・龍隠庵の周辺では、可憐な紫花のイワタバコも見頃を迎える。  

 

線路向かいには臨済宗円覚寺派の東慶寺がある。北条時宗の妻・覚山尼が創建し、妻が横暴な夫から逃れる駆け込み寺の役目を担った。梅の名所だが6月にはアジサイやハナショウブも見事。本堂裏手では、崖地を這うアジサイの仲間・イワガラミの花が毎年特別公開される。今年は例年より早い5月19日から6月10日の公開となった。  

 

鎌倉街道から名月川沿いを進めば臨済宗建長寺派の古刹、アジサイ寺の明月院に至る。約2500株の多くが日本古来の姫アジサイだ。石段の両側に隙間なく咲く青の列は圧巻のひと言。日毎に青さを増し、やがて目の覚めるような「明月院ブルー」に染まる。これを目当てに見物客が押しかける。開花期前半には本堂丸窓から眺める特別公開のハナショウブ、後半は境内のノウゼンカズラが彩りを添える。  


長谷のさまざまなアジサイ風景

大仏が鎮座する長谷エリアでは、アジサイにプラスアルファした美景を満喫したい。  

 

江ノ島電鉄長谷駅近くの長谷寺は、日本最大級の木造仏・十一面観音菩薩像を安置し、四季折々の花が咲く花寺としても人気が高い。境内の斜面に続く眺望散策路を中心に、約40種2500株のアジサイが境内を彩る。散策路の上部には、アジサイの向こうに由比ヶ浜の絶景が広がる。シーズン前半には、ハナショウブを載せた筏が池面に浮かぶ「花筏」眺めも楽しめる。  

 

長谷寺の南にある御霊神社は平安後期創建の古社。境内を江ノ電が走り、梅雨時には線路際に咲くアジサイと江ノ電を一緒に収められる格好の撮影スポットとなっている。  

 

アジサイに賑わう寺社を離れ、苔寺の妙法寺で静寂に浸るのもいい。鎌倉駅の東にある日蓮ゆかりの寺で、苔の石段が知られている。雨を受けて青々と苔むす石段の侘びた風情は一見の価値がある。
鎌倉には各所に寺社巡りにぴったりの精進料理レストランや甘味処、安らぐカフェも多いので休息も楽しみだ。


鎌倉のアジサイの開花期は例年6月いっぱいで見頃は中旬だが、今年は例年より早いことが予想されている。開花から1カ月もすると養生のため花を剪定してしまうので、ホームページなどで開花状況を確認して出かけたい。


画像素材:PIXTA 


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