Vol. 07

日光山内の世界と自然美を体感する家康の霊廟と豊かな緑のパワースポット

勝道上人が奈良時代末期に開山した二荒=日光
東照宮には徳川家康・家光が眠る。
日光山内にある二社一寺の建物群と、
溢れるばかりの自然と絶景とが与えてくれる至福の時空

山岳信仰の霊場と徳川の聖地は世界遺産

日光山の山岳信仰の中心地である二荒山神社は日光連山の主峰・男体山をご神体とする修行場に、勝道上人によって神護景雲元年(767)に創建。後に神仏習合の霊場として知られるようになった。


“二荒山”の由来はいくつかあるが、観音菩薩が降臨する“補陀落山”が二荒に転化したものとされる。さらにこれを空海が“にこう”と読んで“日光”の字を当てて地名になったという。境内に縁結びの木やパワースポット「高天原」などがあることでも人気だ。
日光の二社一寺はかつては“日光山”としてひとつのものであったが、明治期の神仏分離によって日光山の仏教建造物を輪王寺と総称する。天平神護2年(766)に勝道上人が創建した紫雲寺(後の四本龍寺)が起源とされ、「神橋」にはその開創伝説が残る。境内は山内と奥日光に二分され、本堂の「三仏堂」(改修中)や3代将軍家光の廟所「大猷院」の多彩な門や国宝の拝殿・相の間・本殿などの建築群、中禅寺湖の「中禅寺」などは輪王寺に属している。  


駿府城(現静岡市)で元和2年(1616)4月17日(旧暦)に没した徳川家康は久能山に埋葬されたが、幕府は日光への改葬を進め、1617年には着工からわずか5か月で日光東照宮を竣工させ、一周忌の4月17日に正遷宮が催行された。家康は大権現の神号を持つ“神”として祀られることになった。死後20年の寛永13年(1636)には家康を崇拝していた3代将軍家光の命により、大改築工事がなされて本殿と陽明門を完成させている。


東照宮は全国に約130社が現存するとされるが、その総本社ともいえる日光東照宮は8棟の国宝と34棟の重要文化財からなる。現在、第四期修理「平成第一期第三次」事業が進行中で、建設当時の工芸・美術技術の粋を集結した東照宮のシンボルといえる陽明門も40年ぶりに大修復され、2017年3月に一般公開された。その豪壮華麗な建築と意匠は再び見る者を圧倒している。また、神厩舎にある“三猿”や東廻廊の“眠り猫”の彫刻も修復され、その成果には賛否両論あるようだが、創設時の姿を想像してみるのも面白いだろう。


日光山内では年間を通じてさまざまな祭事が開催されるが、なかでも最も盛大なのが東照宮で行なわれる「春季例大祭」だろう。毎年5月17日〜18日に開催され、流鏑馬神事や、家康の神霊を久能山から日光に改葬したときの行列を再現した「百物揃千人武者行列」が華やかに催行されて圧巻だ。

 

緑滴る季節は花巡りと滝巡りで遊ぶ

日光の魅力は日光山内の世界遺産ばかりではない。
鮮烈な新緑の季節ともなれば、市街地から少し足を延ばせば貴重な高山植物の植生やさまざまな表情を見せる多彩な滝、緑したたる美しい景観など、豊かな自然の姿が多くの人を楽しませる。明治の開国以来、多くの外交官や在留外国人らがその美しい光景に魅了され、大正末期にはたとえば中禅寺湖畔に40軒以上の外国人別荘が建てられてもいる。  


 

「日光を見ずして結構と言うなかれ」とは東照宮の美しさを称えた格言だが、この掛詞を踏まえてイギリス人紀行作家イザベラ・バードは「日光に9日も滞在したのだから私には『Kekko』という言葉を使う資格がある」と日本旅行記『日本奥地紀行』(1880年刊)に書いたが、同書には2週間滞在した日光について、木々の素晴らしさ、静寂に包まれた中禅寺湖の暗緑色の湖水、華厳ノ滝の深い滝つぼ、霧降ノ滝の明るい美しさなどを絶賛する記述が見られる。


 

イギリス人外交官、後に駐日公使も務めたアーネスト・サトウは、19歳で初来日以来、通算25年間の在日中に31回も日光に足を運び、特に奥日光の自然と、故郷の風景を思い起こさせる中禅寺湖と湖畔の美しい景観を愛し、『中部北部日本旅行案内』(1884年刊)では20ページにわたって日光を紹介している。明治26年(1896)には湖の東側湖畔沿いに別荘を建てた。この建物にはイザベラ・バードも訪れたことがあり、現在は英国大使館別荘記念公園となって公開されている。
サトウは日光の植生に植物学的な好奇心を寄せていた。新緑のシーズン、日光ならではの花々が見られるのも楽しみのひとつだ。霧降高原のつつじか丘のヤマツツジ(5月中旬〜下旬)や、霧降高原キスゲ平園地のニッコウキスゲ(6月下旬〜7月中旬)、戦場ヶ原に群生するワタスゲ(6月上旬〜下旬)、中禅寺湖畔に広がる千手ヶ浜に咲くクリンソウの群生(6月)に出会える。  


日光は滝が多いことでもよく知られる。中禅寺湖から97mの断崖を流れ落ちる華厳ノ滝、溶岩の上を210mにわたって流れ落ちる竜頭ノ滝はツツジの季節も美しい。湯ノ湖から高さ70mの岩肌を横に広がりながら滑るように流れ落ちる湯滝は圧倒的な迫力。霧降高原には日光三名瀑のひとつとされる霧降ノ滝やその上流にひっそりと点在する“隠れ三滝”が見られる。
新緑の日光は花巡り・滝巡りに最適の季節といえる。  


画像素材:PIXTA 


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