Vol. 06

山麓に広がる日本の原風景残雪の北アルプスを求めて安曇野へ

春は安曇野がことのほか美しい季節。
青い空と残雪の北アルプス、緑の水田。
それらが織り成す風景を眺めに展望地を訪れ、
芸術の里・安曇野の魅力にも触れてみよう。

だれもが懐かしいと感じる風景

長野県中部の安曇野は、北アルプスの山麓に水田が広がるのどかな田園地帯だ。正面に望む常念岳のすらりとした雄姿が心をひきつける。沿道には道行く人々を見守る愛らしい石像の道祖神がたたずみ、心をほっと和ませてくれる。
「日本人のふるさとの原風景」とたびたび評される癒しの風景だ。


3000m級の北アルプスが蓄えた雪解け水は、山中でたっぷりと養分を取り込み、やがて地下水となって地表に湧き出してくる。安曇野市は1日70万tもの伏流水を有する名水の里としても知られている。豊富な水は水田を潤し、冷涼な水と気候が特産のわさびを育てている。  

 

文豪も愛した絶景に会いに行く

5月、常念岳を映し込む水鏡となった水田に田植えの時期が訪れる。早苗が青々とした水田の向こうには、白と蒼に彩られた残雪の北アルプス。その反対側には、新緑に包まれるおだやかな里山の峰々。足元に広がるピンクのレンゲ畑。安曇野が絵画のようにひときわ美しい風景を見せるのが5月から6月にかけてのこの時期だ。  

 

春の安曇野風景を楽しむおすすめの場所は、安曇野市の東にそびえる標高約934mの長峰山山頂。北アルプスの峰々と幾筋もの川が流れる安曇野の田園風景を眼下に見晴らせる絶好の展望スポットだ。作家の川端康成が、同じく作家の井上靖と画家の東山魁夷を誘って長峰山を訪れたのは、昭和45年(1970)の5月12日。3人は山頂に広がる安曇野の光景にいっぺんに心を奪われたという。山頂に建つ東山魁夷の石碑「安曇野を思う」には、「五月の若緑に蔽われた安曇野はなんと美しかったことか」と称賛の言葉が刻まれている。当時の3人が訪れた際の写真はJR穂高駅の駅前で目にすることができる。  


安曇野の自然のなかで芸術に触れる

 

春の安曇野を眺めるだけでなく、その懐に入って謳歌したいなら、サイクリングがおすすめだ。穂高駅前でレンタサイクルを借りて、春風を感じながら周辺の名所を訪ねてみよう。

 

駅の近くにある穂高神社は、日本アルプスの総鎮守として知られる古社。社殿の荘厳なたたずまいに歴史を感じさせる。線路沿いに北へ進めば碌山美術館がある。日本の近代彫刻の父と呼ばれる穂高出身の彫刻家・萩原守衛(碌山)の作品を展示している。5月27日までは開館60周年を記念した企画展「彫刻家 荻原守衛-石膏原型に彫刻の生命を観る-」が開催中だ。東の田園風景を抜けて、日本一広いワサビ畑が広がる大王わさび農場やわさび田湧水群にも立ち寄りたい。大王わさび農場ではわさびコロッケなどのわさびづくし料理を楽しめる。
 

安曇野といえば、美術館や工房が多く集まる芸術の里でもある。北アルプス山麓の穂高有明地区には、ガラス作品を展示する安曇野アートヒルズミュージアムや安曇野ジャンセン美術館、絵本美術館森のおうちなどの美術館やおしゃれなカフェが森の中にたたずむ。ほかにも、北アルプスを一望する高台にある北アルプス展望美術館やのどかな公園にたたずむ安曇野ちひろ美術館など、春に訪れると心地よさそうな美術館が点在しているのでそちらもぜひ足を運びたい。


画像素材:PIXTA 


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