Vol. 02

涼やかな水音に呼ばれて神々の故郷 高千穂に癒される

力強い太陽光が降り注ぐ南九州の夏はまさに南国。
陽気な海岸ドライブもいいが、涼を求めて九州山地の山奥へ。
深緑の山々に抱かれて流れる、清冽な川の音に誘われて訪れるのは神話の残り香が漂う高千穂。
神々が降り立った山里を訪ねる。

清らかな滝が流れ落ちる、絶景の峡谷

九州を漂泊した俳人・種田山頭火が馬見原から高千穂へ向かう道中で詠んだといわれる句、「分け入っても分け入っても青い山」。
旅人の胸中を映したともいわれる青々とした山々を越え、その合間に現れる山里が高千穂だ。
山頭火が歩いた当時よりは町として発展したが、田舎町の風情はそこかしこに残り、中心部を離れれば今も美しい棚田が広がっている。
町でいちばんの名所は五ヶ瀬川の上流に位置する高千穂峡で、約7㎞にわたって切り立った峡谷が続く。
いくつもの柱が林立するような景観を生み出す柱状節理の崖や、青緑色をした穏やかな川の流れを眺めつつ峡谷沿いの遊歩道を進むと、暑さも和らいで涼しく感じられる。
峡谷のなかでもひときわ目をひく「真名井の滝」は清廉な趣の美しい滝。
貸しボートを漕いで、滝を下から仰ぎ見れば、爽やかな水しぶきに心が洗われるようだ。
7・8月の貸しボートは大変な人気で待ち時間も出ることから、峡谷へは早朝に訪れることをおすすめしたい。
貸しボートが営業開始する朝7時30分(夏以外は8時30分)なら行列もなく、人も少ない朝の清らかな空気のなかでいっそう峡谷の風景が神々しく感じられるだろう。
散策の合間には、近くにある茶屋で青竹を使った流しそうめんや川魚を味わうのも夏らしい。

天孫降臨神話が伝わる地で神社巡り

高千穂は大国主命(おおくにぬしのみこと)の国譲りを受けて、神々が降り立った天孫降臨の地と伝わる。
町には天上の高天原より降り立った邇邇芸命(ににぎのみこと)を祀る高千穂神社や、天孫降臨の道案内を務めた猿田毘古神(さるたびこのかみ)を祀る荒立神社など、記紀神話に登場する神々を御祭神とした社が数多く建つ。
神社は町全体に点在しており、中心部の社は徒歩で訪れることもできるが、レンタカーを利用したり、タクシーをチャーターするのが便利。
町はずれにある天岩戸神社と天安河原は天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天岩戸に隠れたという神話の舞台とされ、強力なパワースポットとして全国から人々が願い事を携えて訪れる。
フランスの文化人類学者レヴィ=ストロースもこの社を参拝し、自然景観と信仰が調和して存在するさまに感銘を受けたという。
緑陰のなか、さらさらと流れる川の音や、積み石が洞窟を埋め尽くす神秘的な光景は、彼ならずとも畏敬の念を思い起こさせずにはいられないだろう。

里の宵は神楽の舞で更けてゆく

高千穂の見どころは美しい自然と神社だけではなく、宵闇のなかにもある。
毎年11月中旬?2月上旬に行なわれる里神楽は収穫、生活への感謝と、来年の繁栄への祈りを込めて三十三番の神楽舞が夜通しで奉納される。
本来冬を迎える頃の神事だが、高千穂神社では毎夜見学することができる。
演目は天岩戸神話で天照大御神が籠もる岩の前で舞い踊った天宇受売命(あめのうずめのみこと)や怪力で岩の戸をこじ開けた天手力男神(あめのたぢからおのかみ)が登場する「手力雄(たぢからお)」「鈿女(うずめ)」「戸取(ととり)」、そして国産みを行なった二神が仲良く夫婦で舞う「御神体」の4つ。
過剰な演出はなくとも、囃子に合わせて神々がおごそかに舞い踊り、シャンシャンと神の手で鳴らされる鈴の音を聞けば、いにしえの日本を感じることができる。
また、7月中旬?9月中旬には高千穂峡の夜間ライトアップも行なわれ、幻想的な景観が現出する。

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